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ファンタジー頭へようこそ!

別名お花畑あたま。

のべらっくす【第4回】短編小説の集い ぼくの大好きなビスケット

締切日になってしまいました。【題4回】短編小説の集い。

仕上げました。

書けて良かった~、間に合ってよかった~、私の集中力よよく持ってくれた~って感じです。


【第4回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」

 

 

 

お題は『お菓子』

*********************************

「ぼくの大好きなビスケット」

 

「ポケットのなかには、ビスケットがひとつ♪
 ポケットをたたくと、ビスケットがふたつ♪
 もひとつたたくと、ビスケットはみーっつ♪
 たたいてみるたび、ビスケットはふえるー♪」

 

 ぼくは大きな声でうたを歌いながら、ユウちゃんのおうちから、うれしくってジャンプしそうになりながら、ママの待つおうちに帰った。
 ぼくのポケットのなかにはユウちゃんのお母さんがくれたビスケットが入っている。もうなんじゅっかいもたたいたから、きっと食べきれないくらいたくさんのビスケットになっているかもしれない。
 そんなことがあるわけないのはしっているけど、もしかしたらふしぎなことがおこるかもしれない。なんてワクワクしながらおうちに帰ったんだよ。

 
 おうちについてこっそりポケットをごそごそしてみた。ゆびでさわったら、たくさんのビスケットなんてなかった。やっぱりなーって思って、もらったはずのビスケットをポケットから出そうとしても出せない。あれれ?って思って、ポケットをひっくりかえしてみた。
 ビスケットのかけらが、バラバラになったちいさなちいさなかけらがいっぱい、テーブルの上にも下にもパッってなった!
 小さくなったビスケットをひろっていたら、ママにみつかっちゃった。ほっぺたをたたかれた。ママの力はすごくつよいから、ぼくのあたまはかべにドン!した。目がチカチカした。
 ものすごくいたかったけれど、あたまがいたいよりも、ビスケットがバラバラになってしまったほうがかなしかった。
 ぼくの大好きなビスケット…。

 

 恵子はいつも思っていた、子どもっていうものはいつだって家の中にとんでもないものを持ち込む油断のならない生物だと。
 今日も磨きたてのダイニングに息子がお菓子の粉をばら撒いた。
イライラが募っていた恵子は、つい息子の頬を叩いてしまった。思いのほか力が入ってしまったのか、そのまま壁に激突し倒れこんでしまったが、恵子は見てみぬふりをした。
 他の子どものようにビービーうるさく泣かないようになっただけましだけど、来年は小学校だと言うのにいまだに家の中を汚す。恵子はその事がどうしても我慢できなかった。
 家の中はいつでも完璧に美しくあらねばならない。
 恵子はそう信じていたし、そのために常に気を張っていたからだ。

 

 ぼくはなんてバカなんだろう。またママをおこらせてしまった。またおうちの中をよごしてしまった。
「チョーシにのりすぎ!」
 いつもいつもママにそうおこられる。ビスケットのうたなんて、やっぱりぼくがチョーシにのりすぎたんだ。ユウちゃんのお母さんにもらったままにしておけば、こっそり食べられたのに…。
 ぼくはクッキーやビスケットが大好き。だけど、ママはおへやをよごすからっておやつにだしてくれない。ひとくちで食べられる小さなクッキーでもだめなんだって、手についたカスでおへやをよごしてしまうから…。そういわれると、ぼくは泣きたくなるけどぐっとがまんするんだ。男の子だし、泣くとママがこわい顔になるから。

 

 いわゆるママ友というのは恵子の苦手とする交友関係だったが、幼稚園の父母会役員をやっている以上ある程度のお付き合いは仕方のないものだった。
 幼稚園のあと「打ち合わせ」と言う名目で、何組かの親子連れでファミリーレストランなどに繰り出すこともあるのだが、それが恵子にはたまらない苦痛だった。
 子どもの甲高い声とお行儀の悪さ。それを叱りつけもしないで、自分たちのおしゃべりに夢中になっているママ友たち。すべてが許せなかった。
 その上、自分の息子ときたら少し目を放すと、すぐに調子に乗って騒ぎ出す。物をいただいているときは静かにお行儀良くとあれだけ言い聞かせているのに、周りにつられるどころか率先して騒いでいるように恵子には見える。
 イライラを隠してママ友たちとお付き合いしなければならないのは耐え難いものだった。が、世間体が第一と考える恵子にとって、この苦行もひとつの大切な行事だった。ほどほどにお付き合いの良い、世間様に後ろ指差されることのない平均的な家庭。それが恵子の目指すところだった。

 

 きょうはおともだちとお母さんたちとおいしいパフェを食べにいったよ。ユウちゃんといっしょに「よう怪ダンス」をおどってみんなにみせたんだ。みんなおもしろがっていっしょにうたった。すっんごくたのしかったよ。
 おうちに帰ってから、ママにまたぶたれた。ぼくがチョーシにのりすぎだって。ぼくがいけない子だからゆうごはんはなしだって。
 ママにおこられるからしずかにしていてほしいのに、ぼくのおなかはグーってなくんだよ。どうしてなのかな?

 

 恵子にとって佐々木雄太の母親が幼稚園のママ友たちの中でも一番苦手とするタイプだった。
 子沢山の家庭で、息子と同年の雄太くんが末っ子の五人目の子どもだった。良くこれだけ騒がしい生き物を次から次へと生んだもんだと半分軽蔑していた。

 一度、家へ招かれたときにはあまりの部屋の汚さに目眩がした。部屋中あちこちが落書きやシールで汚れていたし、何といってもどう見ても食べかすが床のあちこちにこぼれていて、吐き気を抑えるのに必死だった。
 そのわりにはキッチンだけはきれいに磨かれていて美しかった。子どものためのおやつを手作りするのが趣味とかで、その美しいキッチンの中を所狭しと動き回っては、たくさんの子どもたちのために、クッキーやらジュースやらを手作りで振舞っていた。
 この「手作り」と言うものが恵子にとってはまたいっそう癇に障るものだった。手作りだから、愛情がこもっているとか、手作りだから健康にいいとか、そんなのはみんな根拠のない事柄で、半分以上は母親を子どもに縛り付けるための脅し文句だと思っていたからだ。恵子にとって子どもと言う存在は自分を縛り付ける重たくて頑丈な鎖としか思えなかったから。


 
    またママがぼくにかなしいことをいった。

「もうユウちゃんとなかよくしちゃだめだ」って、

    なんでかな?ぼくはユウちゃんも、ユウちゃんのお母さんも大好きなのに…。

 

 

 恵子の異変に最初に気付いたのは、佐々木雄太の母親だった。

 

 雄太のお友達、光くん。あれだけ良く遊びに来ていたのに、みるみる回数がへり、来てもおどおどして何かにおびえるようにしている姿は、以前の明るい光くんではない。着ている服もちょっと前まではきちんと完璧に近く整えていたのに、いかにも洗濯のしていない状態で着せられている。


 光くんが袖口を汚してしまい、上着を脱がせて軽く洗ってあげようとしたときに、それを見つけてしまった。
 何かで叩いたような跡。よく見ると光くんの小さな身体全身にその赤黒い跡があった。
 おそるおそる光くんにその跡のことを尋ねると、『ママに怒られた』と、恥ずかしそうに答えた。

 

 佐々木雄太の母親は、悩んだ挙句、このことを幼稚園に相談することに決めた。
 

 


 数ヵ月後、恵子の一人息子、光は児童相談所預かりとなった。


 恵子のしつけはどんどんエスカレートしていき、幼稚園にも行かさず、食事もろくに与えず、最終的にはどんどんやせ細っていく息子を柱に縛り付けて放置していた。
 恵子の夫は単身赴任で家には一月に一度帰ればいいほうだったので、その現状に気がつかずにいたらしい。

 

 光くんは今、大好きなクッキーやビスケットをぽろぽろこぼしても怒られない所にいる。
 子どもが子どもらしくいられる場所は家庭だけとは限らない。

 

 

*童謡「ふしぎなポケット」 まど・みちお作詞/渡辺茂作曲 

 

 

THE MAGIC POCKET「ふしぎなポケット」

THE MAGIC POCKET「ふしぎなポケット」

 

 そう言えば来月28日がまど・みちおさんのご命日ですね。

 

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。感謝です。 

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