のべらっくす【第3回】短編小説の集い サンタさんが「パーン」する!
前回参加できなかったので、何とか仕上げました
12月に入って毎日寒いやら忙しいやら、わけわからない身内のごたごたやらで消耗の日々を送っていましたが、テーマ「サンタクロース」で、何とか仕上げることが出来ました。
ふぅふぅです。
正直なところ、下品な表現があります。
お食事中には読まない事をお勧めします。
【第3回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」
サンタさんが「パーン」する!
クリスマスといえばサンタクロースがトナカイに引かせたそりに乗って、世界中の子どもたちにプレゼントを配ってくれる。
最近は小さな子どもでさえ信じなくなったこのお話。
「プレゼントを頼むのはサンタさんにだけど、買ってくれるのはお父さんお母さんなのさ!」
「でもね、サンタを信じているふりをしたほうがいいものを買ってもらえるから、そこのところはじょうずにやらないとね♪」
五歳にもなれば、友達同士でこんな会話で花が咲く。なんとも夢のない世の中になったものだ。
小さな子どもを持つ親も親で、子どもたちがサンタを信じ続けられる様にという工夫をしない。
サンタにプレゼントをお願いするのに具体性を要求する(近所のショッピングモールのチラシを見せて、その中から選ばせたり)あるいは、プレゼントをお願いするものを、親が決める(そう言葉巧みに仕向ける)。
そんな親たちに育てられたら、純粋であるだろう子どもたちだって、親を手玉に取ることを考えるのも仕方がない。親の自業自得だ。
ところで、本来のサンタクロースとは何なのかご存知だろうか?
サンタクロースが子どもたちの夢をかなえていくという話は本当のことなのだ。ただし、それはサンタの仕事の副産物に過ぎない。サンタは人間たちの願いを叶え、人間たちの喜びを味わうことで存在していた。
太古の昔、サンタクロースはさまざまな名前で呼ばれていた。巨人のジャンプ、神と悪魔の戦争、地の神の寝返り、あらぶる神のたたり、死に至る病を拡大させる死神のダンス、等々…。
サンタクロースの正体は、人間の願いを聞き入れ、その喜びを食し、その後、大きな災害をもたらす自然の現象のことだったのだ。
昔の人々は、サンタクロースに(そのころの名前は違っていたが)大災害を巻き起こさないようにお願いをした。
が、それはサンタ自身にも聞き入れることの出来ない願いだった、サンタが災害の爆発を起こすのは人間が、糞便をするのと同じ原理だったからだ。
人々は少量ずつ小出しの災害にしてもらえないかとサンタに願った。
サンタもそれならば努力は出来ると答えた。その後サンタの努力により、天地を揺るがすような災害は起きなくなった。人々は喜んだ。しかし、サンタがいくら努力をしても、やはり時々には大きな災害が起きてしまう。
また人々は願った。せめて大災害が起こる前に知らせをいただけないかと。
サンタはまた人々の願いをかなえてあげることにした。人々の暮らしはだんだんと平和で過ごしやすいものとなった。そのころにはサンタは人々の願いを叶えることで得た喜びを食しすぎ、糞便を我慢しすぎて完全に便秘体質になっていた。
ある日、一人の人間がサンタに願いをした。
「わたしたちが暮らす地は、南の地に比べて、冷たく凍える大地に覆われている。南の地のように暖かくなれば、大地に植物が茂り、人間も動物も増えることが出来るだろう、お願いだから冷たい大地を暖かい大地に変えてくれ」と。
これにはサンタは困ってしまった。災害を起こすのはサンタの仕業だが、大地の在り様はサンタが生まれるよりももっと前に決められていたこと、その願いは聞き入れることが出来なかった。
するとその人間は、「それでは我々は南の地に移住するとします。南の地に住んでいる人々を追い出して我々がそこに住むのです。そのためにどうか南の地に災害を起こしていただけないでしょうか?そうすれば南の地の住人は消え去り、そのあとにわれわれが暮らすことが出来ます。」
もちろんそんな願いを聞き入れることは出来ない。サンタは人間の勝手さにはじめて気がついた。サンタが便秘で苦悩している間に、北の人間たちは南の地の人間を、虐殺して、その地に大きな国をこしらえていた。
次にサンタに願いに来たのは、東の人々だった。北の住人と同じようなことをサンタに願い、聞き入れないとわかったら自分たちの力でその願いを叶えてしまった。
また同じ人間同士で争いをしたのだった。
サンタは悩みに悩んで、人間たちにこう告げた。
「わたしはもう人間の願いを聞き入れることは出来ない。だが、子どもの願いだけは叶えてあげたいと思う。それも年に一度、冬の中の一番寒いころに」
それからのサンタは平和だった。子どもたちの楽しい夢を叶えることにサンタ自身が喜びを感じた。子どもたちの歓喜は大人たちのそれとは違って、純粋でとても味わい深いものだったから。
災害も、人間のいないところでするようになって、サンタの便秘症も少しずつ快復していった。人間たちは相変わらず自分たち同士で争ったり競ったり、殺したり奴隷にしたりしていたが、子どもたちだけはサンタが黙って守っていた。その事を知っていたのは子どもたちだけだった。大人たちは自分たちのことだけで一生懸命で、いつの日かサンタクロースの存在そのものを忘れていった。
サンタの存在を知って、サンタのことを大切にしてくれていた子どもたちもいずれ時が来れば大人になる。そしてサンタのことを忘れてしまう。それでもいいとサンタは思っていた。だからサンタは生まれてくる新しい命を守り、子どもたちの願い事でしばらくの間は幸せだった。
果てしない時を経て、人間たちはこの大地をも殺してしまうだろう力を作り上げ、それを人間同士の戦いで使っていた。時にそれはお互いの抑止力になったりもしたが、人間の欲望は尽きることはなかった。大地にはどこもかしこも人間たちで埋め尽くされ、人間がいないところはほとんどなくなっていた。
もうそのころにはサンタの存在を信じている人々は子どもも含めほんの少数になっていた。
サンタは子どもたちの願いでさえ叶えることをやめてしまった。サンタはだんだんとやせ細っていった。このまま消えていくのだろうとサンタ自身思っていた。
ところが、サンタの身体はサンタを死なせてはくれなかった、それどころか、人間たちの欲望が次から次へと体内に入ってきて、サンタ自身がそれを止めようと思ってもどうしようもない。サンタは果てしなく入ってくる人間の欲望を時には吐き出し、時には下痢して対処したが、そんなことくらいでは欲望を抑えることはおろか、細胞分裂するように増えるばかり。サンタの痩せ細っていた身体はみるみる肥大化していって、はちきれんばかりになってしまった。
とうとうサンタの身体は大きく膨らんで、空に浮かび始めた。
人間の欲望を身体にはちきれんばかりに溜め込んだサンタクロース。プカプカ浮かびながら人間たちが作り上げては壊しまた作っては壊していった、人間の町を眺めていた。
どの町にも子どもたちの純粋な願いがあった。
サンタは後悔した。
はじめから大人の願いなど聞かずに子どもの願いだけ聞いていたらこんな風にはならなかったのに…。
まもなく弾けるだろう自分のおなかを優しくなでながら、子どもたちのことを考えていた、そして、自ら起こすであろう大災害のことを…。
サンタクロースのことに最初に気付いたのは海のそばに住んでいる一人の子どもだった。その子どもの悲鳴は他の子どもたちにも繋がった。そうして少数ではあるけれど大人にも繋がっていった。欲望だけでなくその他のことでも英知を使っていた大人たちに。
もうすぐサンタさんが大爆発する。
サンタさんがパーンする!
どのくらいの人間が子どもたちの声を聞き入れサンタの起こす災害を逃れることが出来るだろうか?
それはサンタ自身にもわからない。
おわり
**************************
息子に読んでもらったら、「おかんは厨二病か?」と言われてしまいましたので、「たぶんね」と答えておきました ><
読んでくださってありがとうございます。