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ファンタジー頭へようこそ!

別名お花畑あたま。

【第1回】短編小説の集い『トリック・オア・トリート!』A ハロウィン・ホラー

懲りずにまた参加させていただきます。

短編小説の集い「のべらっくす」。

何とか仕上げることが出来たので参加させていただきます。


【第1回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」

 

 

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「トリック・オア・トリート!」

 

「トリック・オア・トリート!」

 子どもたちの元気な声、歓声や笑い声が町のいたるところで響いている。
 今夜はハロウィン。子どもたちも大人たちもみなこのイベントを楽しんでいる。町中きれいな明かりがたくさん灯っていて、暗い夜道をさまよう子どもたちをあたたかく見守ってくれている。

ハロウィン当日まで、ジャムは一人で色々な計画を練っていた。
 まず、学校の仲間たちとは別行動すると言うこと、それにはいつもと違った所に行かねばならない。ジャムにとっては初めての場所、行ったことのない場所になる。もちろん単独で行動するなんて事がばれたら先生や大人たちにしかられることは確か。
ジャムは学校の仲間から、「おとなしすぎる」「ぐずでのろま」「大事なときに失敗するダメなヤツ」と言われ続けて来た。先生たちまでジャムの欠点ばかりを指摘する。ジャムから見ても自分の出来の悪さに泣けてきてしまうことのほうが多い。そんなジャムだから、相手にしてくれる友達はほとんどいない。いつも一人ぼっちだ。
 一人は寂しいけれど、みんなに馬鹿にされるよりは一人のほうが気楽でいい。そうジャムは思っていた。

 自分一人で行動しようと密かに心に決めたのもそんな気持ちから出たものだった。
 
 ジャムはいつも行った事のない町で出会った、思い思いのハロウィンの仮装をした子どもたちの集団の一番目立たない位置について(そう、それは一番後ろ)一緒に町を練り歩くことにした。
 ジャムが入った小集団は、ジャムが隠れるのにちょうどいい大きさの子どもたちが数人。それと、ジャムよりもちょっと大きな子どもたちが数人。たぶん、先頭を歩いて一番大きな声を出しているのがこの集団のリーダーだ。背丈も横幅も一番大きかったし、仮装も13日の金曜日のジェイソンだった。
 どうしてハロウィンにジェイソンなんだろう?とジャムは思ったけれど、まあ確かに一番怖そうには見える。
 何件かの家を回り、ジャムもお菓子をいくつか手にすることが出来た。これも計画通り学校の仲間たちと別行動したおかげだった。仲間たちとのハロウィンはジャムにとって少しも楽しくない。使い走りさせられるか、荷物持ちか、ひどいときには見張り役として同じところにずっといなければならない。それなのに、そんな簡単なことさえもジャムは失敗してしまい、仲間から冷たい目で見られるのだ。
 ところがこうやって仲間たちとはなれることで、ジャムも楽しむことが出来たのだ。普通に後をついて歩いているだけなのに。
 一人で別行動してよかったと心から思った。

 何件目かでお菓子を受け取るとき、ジャムは自分のあとから恐る恐る伸びた小さな手を見つけた。
 自分のあとにも子どもがいたことに気付き、ジャムは驚いた。
「ぼくよりも、目立たずに歩いているなんて!」
 ジャムは思わずその子どもに挨拶してしまった。自分よりも目立たない子どもにとても興味がわいたからだ。
「ハッピー・ハロウィン」
 その子は、おどおどとしながら小さな声で挨拶を返してくれた。ほんとに目立たない。
 色とりどりのあでやかな仮装をしている子どもたちに比べて、この子の仮装は全身がねずみ色のシーツかカーテンをかぶったお化け、ずいぶんと地味だ。そういうジャムも全身ただ真っ黒で、小さな角と羽根が生えているだけだけど。

 「リエット
 その子の名前だ。

 簡単に名前を告げるなんてなんておろかな子どもなんだろう。とジャムは思ったが、リエットのちょっぴりおどおどしながらもうれしそうな目を見たら、ジャムも自然と名前を喋ってしまった。
 「ジャムだよ」
 二人はお互いに似ていることを感じたのか、一緒に回っていた小グループをそれとなく抜け出し二人で話を始めた。
 学校でみんなに馬鹿にされること、一緒に遊んでくれることといえば、ボール拾いや、使い走りばかりなこと。先生も一緒になってからかうこと。
 二人の話はほとんどが一緒だった。

 今日くらいは一人前に楽しみたい!
 せっかくのハロウィンなんだもの。

 ジャムとリエットは、勇気を出して二人だけで行動することに決めた。
 なんだかワクワクしてきた。
 家のベルを鳴らす役と、トリック・オア・トリートと喋る役を交互にしながら、どきどきしてちょっぴり怖い楽しい時間を過ごした。

「この道をぬけるとまた住宅街があるよ」

 リエットに導かれて、街灯があまりない薄暗い道を通ることになった。
 二人ともしっかりと自分に自信が持てて、ちょっと興奮気味だったのもある。きっと普段なら絶対に夜は通らないような道だ。
 その興奮でしばらくは二人とも平気だったが、だんだんと心細くなってきた。
 その時、後ろから足音が聞こえてくるのがわかった。
 ジャムとリエットはお互い顔を見合わせ、心の中で相談した。
 走る?逃げる?このまま歩く?後ろを向いてみる?

「かわいい悪魔さん、ハッピーハロウィン!」

 突然後ろから声がかかった。
 驚いて振り向くと、そこにはニコニコした笑顔のちょっと太ったおじさんが立っていた。
「よかったらこの先の我が家にも訪問してほしいな、色々とお菓子を用意してあるんだけど、仕事でこんな時間になってしまって、お菓子をどうしたらよいか考えていたところなんだよ。」
 二人はほっとした笑顔で、
「ハッピーハロウィン!」と声を合わせた。

 おじさんの話はとても面白かった。あちこちに仕事で出張に出かけているから、そこで出会った面白い人の話や美味しい食べ物の話、珍しい動物や昆虫の話。
 ジャムとリエットはこのニコニコしてちょっと太っちょな愉快なおじさんに夢中になった。何よりおじさんの家で待っていると言う色々なお菓子のことで頭の中がいっぱいだった。

 おじさんの家は、道をぬけると直ぐだった。
 一人暮らしのおじさんの家は真っ暗だった。

「ちょっとまっててね」

 おじさんはそう言うと、家の中に入っていった。
 二人はワクワクしながら待つ。
 家に明かりがともった。
 何と!玄関先からハロウィンの飾りでいっぱい!オレンジ色に輝いたジャック・オー・ランタンもたくさん飾ってある。

「さぁ、お菓子をたくさんあげるから、どうかいたずらしないでおくれ」

 おじさんが、ドアを開けて中へ迎え入れてくれた。

 部屋の中もハロウィンカラー一色でいろいろ飾り付けられていた。そしてテーブルの上には、美味しそうな色とりどりのお菓子が山盛りに!

「トリック・オア・トリート!」

 二人とも喜びの歓声を上げた。

「今ホットチョコレートを持ってくるからね、その椅子に座ってお菓子、どんどん食べててよ」

 何から何までハッピーなことばかり!
 二人は口いっぱいにお菓子をほおばりながら、このささやかな勝利を祝った。二人で冒険したからこんなにいいことにめぐり合えたんだ。

 二人は生まれたときからの親友のように、にっこり微笑みあった。

 おじさんが淹れてくれたホットチョコレートは甘すぎもせず、ちょうどいい感じだった。
 おじさんはジャムたちに旅の面白い話しの続きをしてくれた。
 しばらくしてさっきまで一緒に笑って、一緒にお菓子とおじさんの話に夢中になっていたリエットが、急に頭をテーブルの上に伏せた。
 眠っている!
 ジャムは驚いておじさんの顔を見た。
 そこには、ニコニコ笑っている愉快な優しいおじさんではなく、冷たい氷のような目をギョロつかせた人間がじっとジャムを見つめていた。

「おかしいね、きみには効かないのかな?ホットチョコレートにはたっぷり眠くなるお薬が入れてあるんだけどね」

 ジャムは椅子から立ち上がって後ずさった。

「仕方がない子だね、じゃあ君には特別にいい物を見せてあげるよ。」
 そう言って冷たい目をギョロつかせた人は、ジャムを軽々と抱きかかえると、仕切りの横にあった隣の部屋の扉を開けた。

 まぶしいくらいの光…。それは、たくさんのオレンジ色に輝いたジャック・オ・ランタン…。
 いや違う、かぼちゃの形ではない!
 あれは、あれは、人間の子どもの頭蓋骨だ!

 ジャムはリエットと二人で勝ち取った勝利が、勝利なんてものじゃなく地獄の蓋を開けていたことにやっと気がついた。
 学校で先生が言っていた言葉がこだまする。

「人間には悪魔とも言えるような人がいます、すべての人間が良き人とは限らないのです。このことは忘れないように。」

 先生。やっぱり人間はみんな良い人ばかりじゃなかったよ。

「さぁ、この部屋のジャック・オ・ランタンの仲間に君たちも入るんだよ」

 そう喋り終えるないなや、大きな手で口をふさがれた。
 息が吸えない。

 あぁ、このまま死んでしまうのか…。

「そういう人間に出会ったら、その時こそ、思いっきり力を発揮しておやりなさい。そうです。その人間に底なしの本物の恐怖を味合わせてやるのです。それが我々の大切な仕事の一つと言えます。」

 先生の言葉を思い出した。
「そうだ、そうだった!」

 ジャムは力を振り絞って、押さえられている手に噛み付いた。痛みに耐えられずジャムを放した隙に、学校で教えてもらったことを考え付く限りやった。
 その不気味な部屋を出て、テーブルに倒れているリエットを引きずって運びながら、鍵がかかっていたドアを蹴破って外に出た。

 眠っているリエットを両手で抱きかかえると、ジャムは背中に生えている黒い小さな羽を広げて、月明かりの夜の空へと飛び立った。

 

『ハロウィン連続殺人犯捕まる。』
 リエットたちの町はこの事件で大騒ぎになった。ジャムの住んでいるところでもそれは同じだった。
 事件の当事者となったリエットとジャムは仲間たちからちょっとした英雄扱いされることになった。大人たちには一人で行動したことで大目玉を食らった。
 ジャムとリエット
 ちょっとだけ自分に自信がついた二人。
 悪魔と人間、それぞれの世界で。
 
 

おわり
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 最後まで読んでくださってありがとうございます。

創作するのってやっぱり楽しいです。

 

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