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ファンタジー頭へようこそ!

別名お花畑あたま。

【第0回】短編小説の集いに参加してみました。『毒りんご』

【第0回】短編小説の集いに参加してみます。


【第0回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - Novel Cluster 's on the Star!

 

ブログ以外の文章を書くのは久しぶりなこと、でも、この企画の主催者さんの

 

世間の承認欲求に疲れた紳士淑女の皆様、ようこそいらっしゃいました。 ここではそういった俗世のしがらみを振り切った楽しいコトをしていきましょう。

 

この言葉に励まされてというか刺激を受けて、書いてみました。

何とか仕上がったので、参加します、参加させてくださいー。

 

 

********************************

 

『毒りんご』

 

彼女がそれを見つけたのは、繰り返される日常の風景の中だった。


いつもと同じ、通勤ラッシュ。
男性も女性も、みな一様に歩むホームへの道のり。
どの顔も似たような少ししかめ面を固定して歩いていく。


彼女もほんの数秒前まで、同じような表情をして同じように先を急いでいた。

 

と、

それは、彼女の視界に、モノクロームの画像にそこだけを彩色したかのように、くっきりと浮かび上がった。

いつもとは違うその異質なもの

 

彼女の中の何もかもが無機質な風景の中に、それはそこにじっと佇んでいた。

 

『何故こんなところに?』

 

一瞬、時が止まった。

 

通勤を急ぐ足並みから彼女ははじき出された。

急に立ち止まった彼女に悪態をつく声も耳には入ってこなかった。

 

『何故?』

『何故みんなあれを無視できるの?』

『みんなにはあれが見えていないの?』

 

『何故、いつも通りに歩むことが出来るの?』

 

彼女の中に湧き出た疑問そのまま、先を急ぐ人々はそれに気付いていないのか、この不自然なものを全く無視して歩く速度を緩めることもしない。

 

彼女の脳はそれについての思考を一度に始めた。

 

『何故?』

『何故そこにあるのか?』

『何故?????』

 

彼女はいっせいに動き出したその思考をとめることが出来なかった。

 

 

目まぐるしく思考する中、彼女の中に他の思考が混ざり合ってきた。

それは彼女の過去の記憶。

 

自分の母の記憶。

 

彼女はいつも良い子であることを求められていた。

幼い時から彼女はその役割を従順にこなしていった。

母親の言う通りのお稽古事をこなし、

母親の卒業した女子校に進学をし、

母親の言うままに女子大を卒業し、

母親の勧める起業に就職をした。

髪型も服装もお付き合いする友人たちまでも母親の希望に従った。

 

生まれたときからずっと彼女は母親のよく出来た人形だった。

 

彼女は自分の思いを胸に隠していなければならなかった。

幼い時からそう仕向けられてきたから。

幾度かは母に自分の思いをぶつけたことはあった。

それは常に失敗に終った。

母の声色一つで懐柔されてきたからだ。

 

一度だけ彼女にしてみたらかなりの勇気を振り絞って、母親に逆らったことがあった。

いつもは穏やかな母親の顔が、徐々に醜く変化して鬼のような顔になった。

その時の母親の言葉は彼女の記憶に残っていない。

彼女自身の心が上手に蓋をしてしまった。

彼女が生きるために。

彼女を殺さないために。

 

それからの彼女は、母親に逆らうなどということは一切なく、ただ淡々と日々を生きてきた。

母親の人形として。

 

 

彼女は何かに気付いた。

 

彼女だけの視界にはりついて消えてくれないそれによって。

 

りんご

 

それは真っ赤なりんごだった。

自動改札機にポツンと置かれているりんご

 

誰かのいたずらなのだろうか?

それとも忘れ物なのだろうか?

 

 

自動改札機の上に置かれたりんごは、人の流れをものともせず、そこにじっとたたずんだままだ。

 

 

どのくらいの時間がたったのだろう。

 

彼女にとってそれは一瞬のことの様でもあり何時間も思索していた様でもあり、よくわからなかったが、そんな事どうでもいいと彼女は思っていた。

あのりんごを視界にとどめることが出来たおかげで、彼女の中で何かが変化した。

 

たくさんの人たちがいつも通りに流れていく中、自動改札機の上で彼女を待っているかのようにそこにいてくれたりんご

 

真っ赤なりんご

 

 

彼女はりんごが待っている自動改札機に足を向けた。

そして、改札機を通るときに、りんごを手にした。

 

『わたしの幻覚のりんごさん』

 

そのりんごは確かに彼女の手にあった。

彼女の幻覚でもなんでもない、確かに存在するりんご

 

『あら、それじゃあこれは毒りんごかもね。』

 

そうつぶやきながら、彼女はそのりんごをそっと齧ってみた。

しゃりっとした食感のあとに来る甘い流れるような味。

 

彼女はそのままいつもとは違うホームに向かった。

いつもとは違う電車に乗るために。

 

彼女は自分の乗せられた列車からやっと他の列車にに乗り換えることが出来た。

 

たった一つの日常と違うもののおかげで。

 

真っ赤なりんご

自動改札機の上の真っ赤なりんご

 

彼女の顔は、もう苦しそうなしかめっ面はしていなかった。

そして、いつもと違った確かな足取りで現実を歩いていった。

 

 

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そう言えば、わたしの昔の趣味は小説を書いて投稿したり、もにょもにょどこかで公開したり、そんなこともありました。

もううん十年以上前のお話です。

 

今回の『毒りんご』は昔書いたものの題材だけ使ったものです。

意識しすぎて、お堅い内容になってしまいました。

(前はもう少しふざけたファンタジーでした)

と、あとからごにょごにょ書くのもいけない癖ですね。

 

すみません、最後までお付き合いさせちゃって。

読んでくださってありがとうございます

感謝します。

 

 

 

 

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